TSMC、AI需要の追い風で成長加速。ファーウェイ問題と米中リスクを抱えた今、投資判断はどう見るべきか?
今回は直近の課題を含めて考察します。
はじめに
台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(以下、TSMC)は、世界を代表する半導体ファウンドリー企業であり、特にAIチップ需要の高まりを背景に急成長を遂げています。
TSMCの技術的優位性と生産キャパシティは他社を圧倒し、同社の今後の成長を支える基盤として注目されています。
しかし、地政学的リスクや輸出規制の懸念も影響し、株価が変動している点に留意する必要があります。本記事では、TSMCの成長の背景とリスク要因を総合的に検証します。
企業概要
業界:半導体製造
時価総額:約5,000億ドル
本社:台湾・新竹市
創業:1987年
株価情報
チャートは私の画面です。
基本的に重要な移動平均線とトレンドを示しています。
(欧米の投資家は50日線を重要視します。あとは200日線)
移動平均線は200日線が水色、50日線が紫、21日線が黄色、10日線がピンクです。
銘柄:TSMC
株価:194.68$ (2024年10月29日時点)
配当利回り:1.14%
年初来:+87.19%
出典:https://finance.yahoo.com/quote/TSM/
ビジネスモデルと競争優位性
圧倒的な技術力
TSMCは、IntelやSamsungといった競合他社を上回る技術的優位性を維持しています。特に先端プロセスノード技術での優位性が強みです。
【技術的優位性】
- 3nmプロセス量産体制確立
- 先端パッケージング技術
- 効率的な製造プロセス管理
- 豊富な製造経験
2023年度第3四半期決算分析
業績ハイライト
【売上高・利益】
- 売上高:5,462億台湾ドル
- 前年同期比:10.8%減
- 前期比:13.7%増
- 純利益:2,112億台湾ドル
- 前年同期比:24.9%減
- 前期比:16.1%増
- 営業利益率:41.7%
決算資料:
出典:TSMC
プロセス別売上構成
【製造プロセス技術】
- 5nm以下の先端プロセス:58%
- 7nmプロセス:5%
- 16nm以上の成熟プロセス:37%
地域別売上高
【顧客地域分布】
- 北米:72%
- アジア太平洋:11%
- 中国:8%
- EMEA:6%
- 日本:3%
AI需要と成長戦略
TSMCは、AIチップに対する「驚異的」な需要を背景に、今後も成長が見込まれるとしています。
Q3決算においてもAI関連の投資を積極的に進めており、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野の収益を支える基盤となっています。
また、AIチップの高度なパッケージング技術も今後の成長ドライバーとして期待されています。
2024年にはAI関連の売上が全体の15%程度に達すると予測されており、TSMCはAI分野での成長をさらに加速させる構えです。
【売上構成予測(2024年)】
- AI関連:15%
- スマートフォン:40%
- HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング):25%
- その他:20%
製造能力の拡大
【グローバル展開】
- 台湾:主力生産拠点
- 米国アリゾナ:2025年生産開始予定
- 日本熊本:2024年生産開始
- ドイツ:新工場建設検討中
競合他社に対する優位性
TSMCはIntelやSamsungといった競合他社を上回る技術的優位性を維持しており、特に先端プロセスノード技術でのリードが強みとなっています。
競合が苦境に立たされる中、TSMCは自社のファブ設備を効率的に再配置することで設備投資の抑制にも努めています。
また、アリゾナ州での最先端ノードの生産開始が2025年に予定されており、生産拠点の多様化によって米中間の地政学リスクも軽減される見通しです。
地政学リスクとコンプライアンスの懸念
最近では、ファーウェイのAIプロセッサ「Ascend 910B」に同社のチップが使用されている疑惑が浮上し、中国の半導体企業Sophgoへのチップ出荷を停止しました。
米国の輸出規制に違反する可能性が指摘されており、この事態はグローバルな半導体供給チェーンに影響を与えています。
1. 地政学リスク
【最近の事例】
- ファーウェイ関連の疑惑
- Sophgoへのチップ出荷停止
- 米中貿易摩擦の影響
2. 規制リスク
- 米国の輸出規制
- 技術移転の制限
- コンプライアンス要件の厳格化
株価への影響
TSMCの株価は、Q3決算報告後に一時的に上昇しましたが、その後利益確定売りの圧力により下落しました。
特に10月28日には、ファーウェイ関連の報道を受け4.3%の下落が見られ、通常の47%増の取引量が記録されるなど、機関投資家による利益確定の動きが加速しています。
このような地政学リスクが株価に与える影響は今後も続く可能性があり、投資家は慎重な対応が求められます。
【最近の変動要因】
- Q3決算後の上昇
- 利益確定売りによる下落
- ファーウェイ関連報道での4.3%下落
- 取引量:通常比47%増
オプション取引の動向
最近のプット・コールオプション取引では、TSMCに対する強気の姿勢が見られましたが、ファーウェイ関連の報道により短期的な変動が予想されます。
まとめ:TSMCの成長ポテンシャルとリスク
TSMCは、AIチップの需要拡大を背景に今後も成長が期待される一方で、地政学リスクや輸出規制の懸念が潜在的なリスクとなっています。
AI需要の加速と競合に対する優位性が同社の強みであり、投資家にとって長期的な成長機会を提供する一方、短期的な株価変動も予想されますので注視が必要です。
羊の雑記
円安相場に振れてきましたね。
米国のインフレもおそらく落ち着いてない気もします。
ヨーロッパに住んでいる身としては、円安は打撃ですが株の資産価値は上がってますので、資産配分でうまく立ち回りたいと思います。
注意事項
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マーケットは常に変動する可能性があり、最新の情報に基づいて判断することが重要です。