投資家にとって安定した収益と資産価値の保全は、どちらも重要なテーマだ。
特に、金利が高止まりしつつある現代の市場環境では、流動性を維持しながら高い配当を享受できる投資先が求められている。
このようなニーズに応えるのが、JPモルガンのJEPQ(Nasdaq Equity Premium Income ETF)とインベスコのQQA(QQQ Income Advantage ETF)だ。
両者は月次での安定した分配金を提供する高配当ETFであり、独自の運用戦略により市場のボラティリティを抑えつつ、収益性を最大化している。
本記事では、JEPQとQQAを深く掘り下げ、それぞれの特徴、運用戦略、リスク、そして投資の最適な活用法を詳しく解説する。
JEPQとQQAの概要
JEPQは、Nasdaq 100を基にしたJPモルガンのプロプライエタリー運用戦略により運用されている。
一方、QQAはNasdaq 100インデックスを忠実に追随するインデックス型ETFだ。
両者ともに月次で配当を支払い、収益源の一部としてオプション取引を利用しているが、運用方針には明確な違いがある。
JEPQの特徴
- 運用会社: JPモルガン
- 運用戦略: Nasdaq 100の主要銘柄に基づき、カバードコールオプションをポートフォリオの15-20%で運用。
- 配当利回り: 直近12カ月のトータルリターンベースで9.51%。
- 経費率: 0.35%。
JEPQは、Nasdaq 100を追随するだけでなく、独自のアクティブ戦略により追加の収益機会を狙う。そのため、ややリスクが高いが、収益ポテンシャルも高いのが特徴だ。
QQAの特徴
- 運用会社: インベスコ
- 運用戦略: QQQ(Nasdaq 100インデックスETF)をベースにしたインデックス運用。オプション取引はポートフォリオの5-10%程度で実施。
- 配当利回り: 予想ベースで10%。
- 経費率: 0.29%(2024年末までの特別プロモーションで実質0%)。
QQAは、JEPQに比べて保守的なアプローチを採用しており、インデックス運用の安定性を重視する投資家に適している。
QQAは、主にNASDAQ 100インデックスを完全に再現するETFとして設計されており、その上でオプション戦略を組み合わせることで収益を生み出している。
この戦略は、JPモルガンのJEPQに似ているが、いくつかの重要な違いが存在する。
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インデックス完全複製型
QQAはNASDAQ 100インデックスを完全に再現する「フルレプリケーション戦略」を採用。一方、JEPQは独自のプロプライエタリー戦略に基づき、インデックスのトラッキングに近い結果を目指しているが、完全一致ではない。 -
マネーマーケットファンドの活用
QQAのポートフォリオの約20%がマネーマーケットファンド(短期債権)に投資されている。これにより、市場のボラティリティが高まる状況でも安定性を維持しつつ、収益を補完する仕組みがある。 -
ELNを活用したオプション戦略
QQAはEquity-Linked Notes(ELN)を通じてカバードコールを実施。この仕組みにより、QQAは低コスト(経費率0.29%)での運用を実現し、投資家に高い配当を提供することを目指している。
QQAの10%配当利回り:本当に実現可能か?
QQAの「10%配当利回り」という数字は、単純な株式配当だけでなく、オプション収益も含む戦略的な推定値だ。この数字の根拠として、過去の2回の配当額を基に算出した理論値が挙げられている。
- 計算方法: 過去2回の配当額を合計し、それを年換算することで算出(例:月次配当×12)。
- 現実性の問題: QQAの実際の運用履歴が短いため、この利回りが継続的に達成可能かは不透明。
加えて、QQAのELNの詳細やオプション戦略の「moneyness(オプションが現金化される位置)」が非公開であり、正確な予測が難しい点も懸念される。
QQAのリスクと透明性の問題
QQAは、新規設定されたETFであり、以下のリスクが指摘されている:
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運用履歴の不足
QQAは設立から2カ月程度の短い運用履歴しか持たない。そのため、市場の様々な局面でどのようにパフォーマンスを発揮するのかが未知数である。 -
透明性の欠如
QQAのELNおよびオプション戦略の詳細が明らかにされていない点は投資判断を難しくしている。例えば、カバードコールの対象範囲やヘッジ戦略についての具体的なガイドラインが不明確だ。 -
ヘッジファンド的運用の可能性
QQAは、オプション取引や短期債権投資を柔軟に調整することでリスクを管理しているが、その裁量が大きすぎる点が指摘されている。投資家にとって、この「自由度の高さ」はリターンの魅力である一方、透明性を欠くことでリスクを伴う。
両ETFに共通する運用の仕組み:ELNの重要性
JEPQとQQAの両方で採用されているのがELN(仕組み債:Equity-Linked Notes)だ。ELNは、株式のエクスポージャーを保護しながら、オプション取引で収益を得る仕組みを可能にする。
具体的には、以下のように運用される。
- 株式の保全: ELNを利用することで、ポートフォリオに含まれる株式がオプション取引で売却されるリスクを低減。
- オプション収益の最適化: オプションのプレミアム収益を安定して得られる構造。
- 流動性の維持: ELNが持つ仕組みにより、基礎資産を売却せずに収益を生み出すことが可能。
ELNを効果的に活用するには、高度なデリバティブ取引の専門知識と、大規模な取引基盤が必要だ。
そのため、この仕組みはJPモルガンやインベスコのような大手運用会社でなければ実現が難しい。
パフォーマンス比較
JEPQとQQAのパフォーマンスを比較すると、リスクとリターンの特性が異なることがわかる。
ボラティリティの抑制
例えば、2023年から2024年の間、S&P 500の最大ドローダウンが-8.32%であったのに対し、JEPQやQQAの下落率はそれぞれ約-4%に抑えられている。
この低ボラティリティは、オプション取引による収益が市場の下落リスクを相殺しているためだ。
配当の再投資効果
これらのETFは、月次分配金を再投資することで、リスクを抑えつつ複利効果を高めることが可能。
再投資戦略を活用することで、長期的なリターンを安定化させることができる。
市場の上昇局面では「後入れ先出し法(LIFO)」で売却し、下降局面では「先入れ先出し法(FIFO)」を利用することで、税金効率も向上させることができる。
JEPQとQQAのリスク要因
高配当ETFとして魅力的なJEPQとQQAだが、いくつかのリスク要因も理解しておくべきだ。
- オプション取引のリスク: 市場の急激な変動により、オプション取引が予期せぬ損失をもたらす可能性がある。
- カウンターパーティリスク: ELNを提供する取引相手がデフォルトした場合、投資額が失われる可能性。
- 流動性の制約: 一部の証券会社では、オプション取引を含むETFの取引が制限されることがある。
これらのリスクを抑えるためには、ポートフォリオ全体の一部として限定的に運用することが推奨される。
どちらを選ぶべきか
JEPQとQQAのどちらを選ぶかは、投資家のニーズとリスク許容度による。高い配当利回りとアクティブな運用を重視するならJEPQが適している。
一方、低コストで安定したインデックス運用を求める場合はQQAが魅力的だ。
ただ、QQAは新規設定されたばかりのETFであり、その戦略や特性は魅力的ではあるものの、投資家が安心して資金を投入できる状態には至っていない。特に以下のポイントを考慮すべきだ:
- QQAの「10%配当利回り」という数字は理論値に過ぎず、持続可能性については慎重な見方が必要。
- オプション戦略やマネーマーケットの比率調整に関する透明性が欠如している。
- 市場の様々な状況下での実績がまだ十分に蓄積されていない。
まとめ
また、これらのETFを併用することで、リスクを分散しつつ、異なる運用戦略を活用するメリットを享受できる。
例えば、ポートフォリオの成長部分にはJEPQを、安定性を重視する部分にはQQAを配分するといった方法が考えられる。
長期的な資産形成を目指すなら、これらのETFを補完的に活用しつつ、主要部分ではインデックスファンドや個別株を保有するのが賢明な選択だと思う。
羊の雑記
羊は毎月配当を好んで入れ替えをしています。毎月のインカムは相場が停滞している時などもメンタルが安定する一つの要素となります。
基本的に配当株は成長率が高いわけではないので、配当株はでポートフォリオの一部に考えるぐらいで置くといいと思います。
高配当銘柄はたくさんありますが、分析をきちんとしないと株価が下がって配当のうまみよりも、損するパターンもよくあります。
そのため、できれば配当性向をウォッチして回転させたほうが良いと思います。
しっかりした銘柄を選べば基本的に放置期間も長く、安定した収入の一部となります。
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マーケットは常に変動する可能性があり、最新の情報に基づいて判断することが重要です。